不動産コラム

記事カテゴリー:不動産購入の基礎知識

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2025-08-25

住宅購入は、人生で最も高額な買い物の1つですが、十分な下調べや計画がなければ後悔につながることも少なくありません。特に「お金」「立地」「建物の種類」「間取り」「施工会社選び」といったポイントで失敗すると、住み始めてからの満足度に大きく影響します。住宅は一度購入すると簡単には変更できないため、事前の準備を慎重に行いましょう。

当記事では、住宅購入でよくある失敗例をもとに、失敗しないための対策を詳しく解説します。これから家を購入しようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

 

1. 住宅購入で失敗しやすい5つのポイント

住宅購入は一生に一度の大きな買い物である一方で、失敗や後悔につながるリスクも少なくありません。特に以下の5つのポイントでは、多くの購入者が後悔しやすい傾向にあります。

お金の失敗住宅ローン返済や維持費の見積もりが甘く、将来的に生活を圧迫してしまうケースです。予算オーバーやボーナス払いの見込み違いにより、家計が苦しくなることがあります。
立地の失敗通勤や通学の不便さ、治安の悪さ、周辺施設の不足など、実際に住んでみてから不満を感じることもあります。昼間の印象だけで住環境を判断すると、夜間の人通りや騒音問題に気づけません。
建物の種別の失敗新築か中古、一戸建てかマンション、注文住宅か建売住宅などの選択を誤ると、生活スタイルや将来設計との不一致が生じます。結果として「もっと別の形式にすればよかった」という後悔につながります。
家の間取りや構造の失敗家族の意見を十分に取り入れずに設計を進めてしまうと、住み始めてから不便さやストレスを感じることがあります。収納不足や生活動線の悪さなどは、住み心地を大きく左右します。
施工会社選びの失敗施工技術やアフターフォローの質は会社によって異なります。信頼できる会社を選ばなければ、工事の不備やメンテナンス対応の不十分さにより、大きなトラブルを招く恐れがあります。

それぞれの項目で注意点を押さえることが、満足度の高い住宅購入につながります。

 

2. 住宅購入の際にお金の失敗をしない方法

住宅購入では、資金面での失敗が多く見られます。購入価格が当初の想定を大きく超えてしまったり、住宅ローンの返済が家計を圧迫してしまったりと、お金の失敗は長期間にわたり影響を及ぼします。特に初めて住宅を購入する方にとっては、見えにくいコストや将来的な支出は見落としやすいので注意しましょう。

ここでは、購入予算をオーバーしないようにするポイントと、住宅ローンを無理なく組むための考え方について解説します。

 

2-1. 購入予算をオーバーさせない

住宅購入で予算を超過してしまう主な原因は、資金計画の甘さです。住宅購入では、土地選びを優先して建物の費用を圧迫したり、オプション設備を追加していくうちに見積額が膨らんでしまったりする例が多く見られます。

また、坪単価には外構や諸費用、付帯工事費が含まれていないため、坪単価のみを見て予算を組んでいると、最終的な金額が大幅に増えていたという事態に陥ってしまいます。地盤改良や登記費用、引っ越し費用など、住宅や土地以外にかかる費用が多数ある点も把握しておきましょう。

対策としては、あらかじめ家族で希望条件の優先順位をつけ、不要な部分は削る意識を持つことが大切です。将来のメンテナンス費用やライフプランも踏まえ、長期的な視点で予算を組みましょう。

 

2-2. 住宅ローンを賢く組む

住宅ローンの組み方を誤ると、数十年にわたる返済生活が苦しいものになります。

まず注意したいのは、借入可能上限額をそのままローンの目安にしてしまう点です。上限額はあくまで金融機関が貸せる金額であり、生活に無理のない返済額ではありません。また、金利タイプごとの特徴を理解していないと、変動金利による返済額の増加や、固定金利による総支払額の多さに後悔する可能性もあります。

返済額の設定は、現在の収支に加え、将来の学費や車の買い替えなどを見越して判断する必要があります。繰り上げ返済や住宅ローン控除なども視野に入れ、総返済額を抑える工夫をしたり、金融機関や専門家に相談したりして、無理のないローンを組みましょう。

 

3. 住宅の立地で後悔しない方法

住宅購入後に立地で後悔する人は少なくありません。駅までのアクセス、買い物施設の有無、学校までの距離や周辺環境など、日常生活に直結する要素を見落とすと、暮らしに支障をきたす可能性があります。

ここでは、立地選びで後悔しないために、土地選びで確認しておきたいポイントを紹介します。

 

3-1. 通勤・通学の時間帯に駅やバス停まで歩く

通勤・通学時間帯のアクセスは、生活の快適さを大きく左右する要素です。駅やバス停までの距離が「徒歩10分以内」とされていても、実際には信号待ちや混雑、坂道などの影響で時間がかかることもあります。特に始発電車があるか、バスの本数が多いかといった条件は、毎日の通勤・通学のストレス軽減に直結します。

また、小さな子どもや高齢者にとって、快適なルートを確保できるかどうかを事前に確認しておきましょう。事前調査として、平日の朝に実際に歩いてみることで、アクセス性や交通状況の実態が見えてきます。数字だけで判断せず、実際の生活リズムを意識して動線を確認することが大切です。

 

3-2. 家族にとって便利な買い物施設があるか確認する

スーパーやドラッグストア、コンビニなどの買い物施設が徒歩圏にあるかどうかは、暮らしの満足度に大きく関わります。特に子育て世帯や高齢者のいる家庭では、日用品を無理なく購入できる環境が整っているかが重要です。

買い物の頻度や時間帯は家庭によって異なるため、自分たちの生活スタイルに合った立地かどうかを見極めましょう。たとえば、仕事帰りに買い物を済ませることが多い家庭では、駅から自宅までの間にスーパーがあると便利です。また、夜間や緊急時に対応できる24時間営業の店舗や、大型商業施設が近くにあると、生活の利便性が向上します。

インターネットで検索するだけでなく、実際に現地を歩いて、店の規模や混雑状況、営業時間なども含めて確認することをおすすめします。

 

3-3. 学校までの道のりをチェックする

小さな子どもがいる家庭では、学校までの距離や通学路の安全性を事前に確認しましょう。距離ももちろん重要ですが、それ以上に大切なのは道の環境です。

たとえば、交通量の多い道路を横断しなければならない、歩道が狭く車との距離が近い、夜間は街灯が少なく暗いといった状況は、子どもの通学におけるリスクを高めます。学校公開日や地域の登校班の有無など、地域の教育環境についても事前に情報を得ておくとより具体的な判断が可能です。

 

3-4. 時間を変えて複数回周りを見てみる

住宅の立地は、時間帯や曜日によって印象が大きく変わります。

たとえば、昼間は静かで穏やかに見えた地域でも、夜になると交通量が増えたり、近隣施設からの騒音や強い照明に悩まされたりすることがあります。また、平日は閑静でも週末には騒がしくなる地域もあるため、1回の見学で判断するのは控えましょう。

現地には数回、朝・昼・夕方・夜と異なる時間帯に足を運び、周囲の音や明るさ、交通の流れ、人通りの多さなどを確認しましょう。併せて、災害時の避難経路や水はけの状況なども確認しておくと、災害に備えられます。

 

4. 住宅の種別を間違わない方法

住宅を購入するとき、多くの人が悩んでしまうのが、「新築にするべきか中古にするべきか」「マンションか一戸建てか」というポイントです。どの種別にもメリットとデメリットがあり、一概にどれが正解とは言い切れないため、自分や家族のライフスタイル、将来の展望、予算に応じて選びましょう。

ここでは代表的な住宅種別について、特徴を比較しながら、どのような人に向いているかを解説します。

 

4-1. 新築住宅と中古住宅

新築住宅と中古住宅の違いは下記の通りです。

新築住宅と中古住宅の違い

新築住宅中古住宅
メリット最新設備が揃っている
耐震性が高い
費用が安い
選択肢が豊富
デメリット費用が高めで物件数が少ない築年数による劣化・耐震性の低下
向いている人快適性を重視する人
予算に余裕がある人
立地重視の人
リノベを考えている人

新築住宅は、最新の省エネ設備や優れた耐震性を備えていることが多く、入居後すぐに修繕が必要になる心配も少ないのが魅力です。ただし、価格は高めで、好立地にある物件数も限られるため、理想の条件を満たす物件を見つけにくい傾向があります。

一方、中古住宅は実際の物件を確認して購入を検討できる上、費用が抑えられる点がメリットです。リノベーションを前提とすれば、自分好みの内装に仕上げることも可能です。

立地や予算を重視する人には中古住宅が選択肢になりますが、耐震性や老朽化リスクも忘れずに確認しましょう。

 

4-2. 一戸建てと集合住宅

一戸建てと集合住宅(マンション)の違いは下記の通りです。

一戸建てと集合住宅の違い

一戸建て集合住宅
メリット自由度が高く、
プライバシーを確保できる
セキュリティが高く、
利便性もよい
デメリット管理や修繕をすべて自己責任で行う必要がある管理費や修繕積立金を負担する必要がある
向いている人家族で広く自由に暮らしたい人管理の手間を減らしたい人

一戸建ては、建物と土地をすべて自分で所有するため、リフォームや増築などの自由度が高い点が特徴です。敷地内に駐車場や庭を持つことも可能で、家族のライフスタイルに合わせた自由な暮らしが実現できます。ただし、メンテナンスや修繕はすべて自己管理となるので、長期的な維持費も計画的に準備しておかなくてはなりません。

マンションはセキュリティや管理の手間を軽減できる上、駅近など利便性の高い立地に建てられていることが多いのがメリットです。共用部分の管理や修繕は管理組合が担いますが、毎月の管理費負担や生活上の制約がある点には注意が必要です。

 

4-3. 注文住宅と建売住宅

一戸建ての住宅には、注文住宅と建売住宅の2種類があります。

注文住宅と建売住宅の違い

注文住宅建売住宅
メリット間取りや設備を
自由に設計できる
費用が抑えられ、
入居までがスムーズ
デメリット土地探しや打ち合わせに
手間がかかる
間取りや仕様の自由度が低い
向いている人理想の家を自分で作りたい人早く手間なく入居したい人

注文住宅は、外観や内装、間取りなどを自由に設計できる点が最大の魅力です。こだわりの住まいを実現できる一方で、土地探しから始まり、設計・施工・資金管理などに多くの時間と労力を要します。自由度が高い分、予算管理も大切です。

建売住宅は、あらかじめ完成している住宅を購入するため、完成イメージを確認した上で判断でき、入居までの期間も短くて済みます。設計の自由度は低いですが、コストを抑えたい人や忙しい人にとっては現実的な選択肢です。

 

5. 住みやすい間取りや構造の家を選ぶ・作る方法

住宅の間取りや構造は、暮らしやすさに直結する要素です。購入後に後悔しないために、見た目の印象や最新設備だけで判断せず、ライフスタイルや将来の変化、家族全員のニーズを総合的に考慮しましょう。

ここでは、間取りや構造を検討する際に押さえておきたい3つの視点について解説します。

 

5-1. ライフステージや家族構成の変化も想定する

将来的な変化を見越して間取りを設計・選定することは、長く快適に暮らす上で欠かせません。子どもの成長や独立、親との同居、在宅勤務の導入など、家族構成や生活スタイルは年月とともに変化します。

たとえば、子どもが小さいうちはプレイルームや広いリビングが活躍しますが、思春期以降は個室が必要になるかもしれません。可動式の間仕切りを活用した可変性のある間取りにしておけば、生活スタイルに合わせて柔軟に変更できます。また、リモートワークが増えた現代では、書斎やワークスペースの確保も重要です。

長く住むことを前提に、今だけでなく将来を見据えた空間設計を意識することが失敗しない家づくりにつながります。

 

5-2. 災害への備えを意識する

安全性を高める上で、災害への備えは間取りや構造においても配慮すべき要素です。日本は地震や台風、豪雨などの自然災害が多いため、建物の耐震性能や水害への対策を事前に確認することが欠かせません。

たとえば、耐震等級の高い構造や、土砂災害警戒区域・浸水想定区域に該当しないかをハザードマップで確認することが重要です。間取り面では、非常時の避難経路を確保するために、廊下や階段の幅や配置にも注意を払う必要があります。

安全を優先した住まいづくりは、家族の命と生活を守る備えとして機能します。デザインや利便性だけでなく、防災の視点からも総合的に間取りを考えることが求められます。

 

5-3. 家に最も長くいる家族の意見を取り入れる

間取りを検討する際には、家にいる時間が最も長い家族の意見を積極的に取り入れることが、住み心地のよい家づくりに直結します。多くの場合、それは家事を担う人や在宅勤務をしている家族にあたります。

たとえば、家事動線がスムーズな間取りにすれば、日々の負担を大幅に軽減できます。キッチン・洗面所・洗濯機の位置関係や、物干しスペースへの動線は特に重要な要素です。また、静かに仕事に集中したい人がいる場合には、防音性の高い書斎の設置などを検討しましょう。

家族全員の意見を出し合いながら、優先順位を明確にすることが大切です。

 

6. 施工会社選びを誤らない方法

施工会社には、大きく分けてハウスメーカーと工務店の2種類があります。

  • ハウスメーカー
  • 全国規模で展開している企業が多く、設計から施工までを自社で一貫して管理しています。品質が安定しており、構造や工法の選択肢も豊富なため、標準化された高性能住宅を求める場合に適しています。

  • 工務店
  • 地域密着型の事業形態をとっており、地元の気候や土地の特性に詳しいのが特徴です。設計の自由度が高く、施主の細かな要望にも柔軟に対応できるため、個性的な住まいを目指す人に向いています。

どちらを選ぶかは、コスト、デザイン、対応力、アフターサービスの重視度など、施主の希望に応じて判断しましょう。ここでは、施工会社を選ぶポイントを紹介します。

 

6-1. 担当者の対応力は高いか

住宅を建築する際は、施工会社の担当者と長期間にわたってやりとりを重ねることになるので、担当者の対応力は会社選びの成否に直結します。

たとえば、質問に対して的確かつ迅速に答えてくれるか、専門知識が豊富かどうかは、信頼性を判断する上で大きな指標となります。資金計画や間取り、住宅ローン制度など幅広い内容に関しても丁寧に説明してくれる担当者であれば、より安心です。

打ち合わせやメール・電話の対応から誠実さが感じられるかも確認し、もし契約を急がせるような姿勢が見られた場合は、慎重な検討を行う必要があります。

 

6-2. 施工実績は豊富か

施工会社の実力を判断する上で、施工実績の有無は非常に重要な情報です。これまでにどれだけの住宅を手がけてきたかだけでなく、どのような工法や構造に対応してきたか、そして施主の希望に対してどれだけ柔軟に応えてきたかをチェックします。

施工事例からは、家の規模やデザインの傾向、仕上がりの質などが見えてきます。また、実績が過去のものばかりではなく、直近数年間にわたって安定して施工しているかも大切な指標です。

住宅展示場やモデルルームを訪ねて、担当者に自分たちの希望に合う事例があるかどうかを質問すれば、施工能力の具体的なイメージをつかめます。

 

まとめ

住宅購入を成功させるためには、単に物件情報を集めるだけでなく、自分や家族のライフスタイルに合った選択をすることが重要です。立地・間取り・資金計画などの各ポイントについて冷静に検討することで、将来的な不安や不満を避けられます。

また、住宅を建てるときは施工会社の選定や住宅ローンの組み方も慎重に判断する必要があります。短期的な条件だけでなく、長期的な視点で「どのように暮らしたいか」を軸に考えることが、満足度の高い家づくりへの第一歩です。


2025-07-24

近年、大地震の発生が全国各地で相次ぐ中、住宅の安全性を可視化する手段として注目されているのが「耐震等級」です。特に新築住宅を検討している方にとっては、耐震性能の高さが家族の命や財産を守る大きな指標となります。

当記事では、耐震等級の基本的な定義や等級ごとの違い、設計面での工夫やデメリット、取得による保険料・ローン金利の優遇など、実用的な情報を丁寧に解説します。耐震等級1は危険なのかという疑問も解消するので、安心できる住まいづくりのために耐震等級について正しく理解し、長期的な視点から自分に合った選択を見つけましょう。

 

1. 耐震等級とは

耐震等級とは、住宅の地震に対する強さを数値化したもので、国の「住宅性能表示制度」における評価項目の1つです。耐震等級は1~3の3段階で評価され、等級が高いほど地震に対する耐久性が高いとされています。具体的には、「構造躯体の倒壊等防止」と「構造躯体の損傷防止」という2つの観点から評価が行われ、いずれも建物が地震でどれだけ壊れにくいか、損傷を受けにくいかを示す指標です。

耐震等級が制度として導入された背景には、阪神・淡路大震災のような大規模地震での被害を教訓に、より高い安全性を「見える化」するニーズがあったことが挙げられます。

 

1-1. 耐震と制震・免震の違い

建物の地震対策には、「耐震」「制震(制振)」「免震」という3つの異なる工法があります。

「耐震」は、建物の柱や壁、筋交いなどの構造体を強化し、揺れに耐える構造です。現在の一般住宅の多くに採用されており、建築基準法の最低限の基準でもあります。倒壊を防ぎ、居住者の避難を確保する目的で設計されています。

「制震」は、建物の内部にダンパーなどの制震装置を組み込み、地震のエネルギーを吸収して揺れを軽減する構造です。建物全体へのダメージを抑える効果があり、高層ビルや長寿命住宅で導入されることが多い工法です。

「免震」は、建物と地盤の間に免震装置(滑り支承や積層ゴムなど)を設置し、地震の揺れを建物に伝えにくくする構造です。揺れそのものを回避するのでもっとも高い地震対策とされますが、コストがかかるため導入には慎重な検討が必要です。

このように、耐震は「耐える」、制震は「吸収する」、免震は「伝えない」という異なるアプローチで地震に対処しています。

 

2. 耐震等級1~3の違い|どの程度の地震に耐えられる?

住宅の地震への強さを評価する「耐震等級」は、等級1から3までの3段階で地震に対する耐性を示します。数字が大きくなるほど建物の耐震性は高くなり、大地震に対する備えとして信頼度も向上します。

ここでは、それぞれの等級が具体的にどの程度の地震に耐えられるのかを詳しく解説します。

 

2-1. 耐震等級1

耐震等級1は、建築基準法で定められた最低限の耐震性能を満たす水準です。これは「数百年に一度程度の大地震(震度6強~7相当)で倒壊・崩壊しないこと」、「数十年に一度の中規模地震(震度5強相当)で大きな損傷を生じないこと」が条件となっています。

人命を守る最低ラインを確保した基準であり、震災直後に建物の使用を続けられるとは限りません。実際には、構造に損傷が生じる可能性があるため、補修や場合によっては建て替えが必要になるケースもあります。

 

2-2. 耐震等級2

耐震等級2は、耐震等級1の1.25倍の地震力に耐えられる強度を有します。これは「長期優良住宅」や「避難所に指定される学校・病院」などにも求められる基準であり、より安心して長く住める住宅を目指す際の目安となります。

具体的には、震度6強~7の地震の1.25倍の力でも倒壊・崩壊せず、震度5強相当の揺れに対しても損傷しにくい構造が求められます。日常的な安全性に加え、大規模災害時にも建物の機能を維持しやすいため、災害に強い住まいを希望する方におすすめです。

ただし、構造上は柱や壁の本数が増えたり、開口部が制限されたりすることもあるため、設計の自由度に多少影響を及ぼす点は注意が必要です。

 

2-3. 耐震等級3

耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の地震力に耐えられる性能を持ち、現行の住宅性能表示制度における最高等級です。震度6強~7相当の大地震が発生しても倒壊・崩壊を防ぎ、さらにその後の余震にも耐える高い信頼性があり、災害時の警察署や消防署などにも採用されています。

大きな補修を必要とせず住み続けられる可能性が高いため、家族の安全や資産価値の維持を重視する方にとっては、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。また、長期優良住宅やフラット35などの優遇措置対象にもなるため、住宅ローンや地震保険料の軽減という経済的なメリットも得られます。

 

3. 耐震等級1の家は危ないって本当?

現行の建築基準法に基づけば、耐震等級1の基準を満たしていれば住宅は合法的に建てられます。しかし、住宅性能評価・表示協会の調査では、新築で住宅性能評価書を取得している住宅の約97%が耐震等級3を取得しており、耐震等級1の住宅はごくわずかです。

出典:一般財団法人 住宅性能評価・表示協会「令和5年度 建設住宅性能 評価書(新築)データ (一戸建ての住宅)」

耐震等級1の家は危険なのか、過去の地震事例や制度の背景から解説します。

 

3-1. 熊本地震では耐震等級3の住宅の大半が無被害だったため

2016年に発生した熊本地震では、最大震度7の揺れが短期間に2度も襲い、住宅への被害が広範囲にわたりました。この地震を受けて国土交通省が行った調査によると、建築基準法レベル(=耐震等級1)の住宅では、倒壊率が2.3%、大破率が4.0%でした。一方、耐震等級3の住宅では、倒壊・大破の事例はなく、無被害の割合が9割近くに上り、地震に対する優位性がはっきりと証明されました。

出典:国土交通省「「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書のポイント」

大地震に備えるなら、等級の高さは安心材料となるでしょう。

 

3-2. 複数回の地震が起きると倒壊する可能性があるため

耐震等級1の住宅は、震度6強~7クラスの地震に対して「一度は倒壊しない」ことを基準に設計されています。しかし、実際の地震では1回きりの揺れで済むとは限りません。熊本地震のように震度7が2度続くケースもあり、1回目の揺れで損傷した建物は、2回目の揺れに耐えきれず倒壊する可能性があります。

耐震等級1は、あくまで人命を守る最低限の基準であり、建物の継続的な使用まで想定していません。一方で耐震等級3では、建物にかかる力が抑えられる構造のため、初期の損傷が少なく、その後の余震にも高い耐性を持ちます。繰り返しの地震に備えるには、より高い耐震等級が望ましいと言えるでしょう。

 

3-3. 建築基準法で定められる最低限の基準であるため

耐震等級1は、建築基準法で定められた「最低限の耐震性能」です。この基準の目的は、主に「人命の保護」にあり、建物が倒壊しない程度の強度であれば、一定の損傷は許容されるとされています。つまり、命を守ることは想定されていますが、地震後もそのまま住み続けられるかどうかは保証されていません。

また、建築基準法の耐震基準は全国一律で定められており、地盤や地域の地震リスクに関係なく最低限のラインで設計されています。そのため、「最低限」の強度では心許ないと感じ、結果として新築住宅のほとんどが耐震等級3を採用しているのが現状です。

 

4. 耐震等級にかかわる要素

建物の耐震性は、構造全体の設計バランスと部材の使い方によって決まります。耐震等級を高めたいのであれば、それぞれの要素について耐震基準を満たすだけでなく、構造的な整合性を持たせる設計が求められます。

ここでは、耐震等級に関わるそれぞれのポイントを詳しく解説します。

 

4-1. 建物の重さ

建物の重さは、耐震性に直接影響する重要な要素です。地震の揺れは地盤から建物へと伝わり、建物が重いほど揺れの力を大きく受けてしまいます。特に屋根や外壁など、上部構造が重いと重心が高くなり、揺れに対する不安定さが増すため注意が必要です。

また、外壁材もサイディングや軽量パネルなどを用いることで、地震による建物の変形リスクを抑える効果が期待できます。木造住宅はRC造や鉄骨造よりも軽量なので、適切に設計すれば耐震性を高めやすいでしょう。

 

4-2. 耐力壁と耐震金物の量と配置バランス

耐震性能を支える柱と壁の中でも、特に重要なのが「耐力壁」と「耐震金物」です。耐力壁は、筋交いや構造用合板などを使って建物の横揺れを抑える役割を担います。壁の量が多ければ多いほど強度は高まりますが、それ以上に大切なのが壁や金物の「配置バランス」です。

耐震金物とは、柱や梁、土台などの接合部を補強する金具を指し、適切に配置することで構造全体の結合力が高まり、揺れに対して柔軟に耐えられるようになります。たとえば、南側だけに開口部(窓)が多く、北側に壁が偏るような設計では、地震時にねじれや倒壊が発生しやすくなります。

見た目では分かりにくい要素ですが、耐震等級を高めるためには、耐力壁と金物の配置を緻密に設計することが大切です。

 

4-3. 水平構面の耐震性能

地震は上下の揺れだけでなく、水平方向にも強い力を発生させます。このときに重要となるのが「水平構面」の強度です。水平構面とは、建物の床や屋根など水平方向の面構造のことで、地震時のねじれや変形を抑える役割を持っています。

たとえば、2階部分に大きな吹き抜けを設けたり、床が不連続な構造になっていたりすると、水平方向の剛性が低下し、建物全体がねじれて倒壊するリスクが高まります。耐震等級を高く設定するには、床面の構造を強固にし、荷重や揺れを均等に分散させる設計が必要です。

特に木造住宅では、合板による床面の補強や剛床工法などを用いて、水平構面の強度を高めるのが一般的です。

 

4-4. 基礎の耐震性能

耐震性能を支えるもっとも根本的な部分が「基礎構造」です。いかに建物の上部を頑丈にしても、基礎が弱ければ揺れに耐えきれず大きな被害につながります。

基礎には「布基礎」と「ベタ基礎」があり、一般的に耐震性に優れるとされるのはベタ基礎です。ベタ基礎は床下全体に鉄筋コンクリートを敷き詰める構造で、荷重を面で支えるため、地盤沈下や地震による建物の傾きにも強い特徴があります。

また、基礎と建物を接合するアンカーボルトの設置、コンクリートの厚みや配筋の正確さなども耐震性を左右する重要なポイントです。基礎がしっかりしていれば、建物全体の耐震力も格段に高まります。

 

5. 新築住宅の耐震等級を高めるメリット

耐震等級を高めることには、地震への強さ以外にもさまざまなメリットがあります。

近年では、長期優良住宅やフラット35Sなど、耐震等級が高い住宅に対して支援制度も充実しており、安全性と資産価値の両面で大きな恩恵を受けられます。ここでは、具体的な4つのメリットを解説します。

 

5-1. 地震保険料が安くなる

耐震等級が高い住宅は、地震保険料の割引対象となり、家計の負担軽減につながります。

地震保険料の割引を受ける場合と受けない場合とでは、年間数万円の差が出ることもあります。住宅ローンの返済がある間、地震保険の加入を継続するなら、長期的に見ると大きな節約になり、家計にゆとりが生まれるでしょう。なお、地震保険は火災保険とセットで加入が必要です。地震リスクへの備えだけでなく、保険料を抑える観点からも、耐震等級の取得は大きな価値を持つと言えるでしょう。

 

5-2. 一部住宅ローンの金利が安くなる

耐震等級を高めると、「フラット35S」などの住宅ローンで金利優遇制度を利用できる可能性があります。金利が低くなれば、返済総額を数十万円単位で抑えることが可能です。

また、民間金融機関でも耐震性能の高い住宅に対して独自の優遇制度を設けている場合があるため、資金計画の段階で耐震等級を意識した設計を行うことで経済的な負担を軽減できます。

 

5-3. 災害時のダメージを抑えられる

耐震等級が高い住宅は、大地震が発生した際の被害を最小限にとどめる可能性が高くなります。構造的な強度が高いと倒壊リスクが低く、揺れによる内部損傷や家具の転倒も抑えやすくなります。地震後も住み続けられる可能性が高いため、避難所生活を避けたい方や、家族の安全を最優先に考える方にとっては重要な要素です。

建物が大きく損傷しなければ修繕費も抑えられ、資産の損失を防ぐことにもつながります。

 

5-4. 売却時に高く売りやすくなる

耐震等級が高い住宅は、第三者機関によって耐震性能が証明されているため、購入希望者からの信頼を得やすくなります。特に中古住宅市場では、耐震性が数値で示されていることは差別化のポイントになり、結果として査定価格や売却時の交渉に有利に働くケースが多くあります。

将来的な資産価値の維持という観点でも、耐震等級3などの高い基準を満たしておけば、競争力のある物件として評価されます。

 

6. 新築住宅の耐震等級を高めるデメリット

耐震等級を高めることで住宅の安全性は向上しますが、一方でいくつかデメリットも存在します。どこまでの耐震性能を求めるのかは、家族構成やライフスタイル、予算とのバランスを見極めて判断する必要があります。

ここでは、代表的な2つのデメリットについて詳しく解説します。

 

6-1. 建築費用が高くなりやすい

耐震等級を高めるには、構造面の強化が必要となるため、通常の住宅よりも建築費が高くなる傾向にあります。

たとえば耐震等級3の家を建てる場合、必要な耐力壁や金物の追加、柱や梁の太さの増強といった構造の工夫が求められ、それに伴い材料費と工賃が上昇します。さらに、等級認定を受けるためには構造計算や第三者機関への申請が必要で、それらの諸費用も数十万円規模になることがあります。

こうした初期コストの増加をどのように捉えるかは、地震後の修繕リスクや資産価値の維持といった長期的視点で判断しましょう。

 

6-2. 間取りの制限が生まれやすい

耐震等級を高めるためには、建物全体の構造バランスを保つ必要があり、その結果、間取りに一定の制限が生じることがあります。

たとえば、大きなLDKや吹き抜けを希望しても、耐力壁を確保するために壁や柱を追加せざるを得ず、理想の空間が実現しにくくなるケースもあります。また、構造上の都合で窓の大きさや配置、通路の取り方などに制約が生まれ、開放感やデザイン性が損なわれることも考えられます。

間取りの自由度を重視する場合、耐震性と設計の折り合いをどのようにつけるかが重要なポイントです。ただし、設計力のある工務店やハウスメーカーであれば、構造とデザインを両立するプラン提案が可能な場合もあるため、希望を満たせる工務店やハウスメーカーを早めに探し、相談することが大切です。

 

まとめ

耐震等級は、住宅の地震に対する強さを客観的に示す重要な指標です。等級が高いほど耐震性能が高く、地震時の被害リスクを軽減できるだけでなく、地震保険料の割引や住宅ローン金利の優遇など、経済的なメリットも多く得られます。

ただし、設計の自由度や建築コストといった面でのデメリットもあるため、ライフスタイルや優先順位に応じた慎重な判断が必要です。

将来の資産価値や安心・安全を考える上でも、耐震等級は非常に価値のある評価基準です。家族の命と暮らしを守るために、信頼できる施工会社とよく相談し、自分にとって最適な耐震性能の住まいを目指しましょう。

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