不動産コラム

2025-10-24
RC造とは?メリット・デメリット・防音性や他の構造との違いを解説

マンションやビルに多く採用されるRC造(鉄筋コンクリート造)は、耐震性や耐火性、耐久性に優れていることで知られている建物構造の1つです。しかし、「建築コストが高いのでは?」「湿気や結露の問題はない?」「本当に静かに暮らせるの?」といった不安を抱く方もいるでしょう。

当記事では、RC造の基本やメリット・デメリット、防音性の実態、SRC造・S造・木造との違い、法定耐用年数と実際の寿命について分かりやすく解説します。構造を正しく知ることで、将来の資産価値を見据えた判断ができ、購入時の安心感や売却時の納得感を得られるでしょう。

 

1. RC造(鉄筋コンクリート造)とは?

RC造とは、柱や梁などの骨組みに鉄筋を組み、その周囲に型枠を設置してコンクリートを流し込み固めることで形成される構造です。「Reinforced Concrete」の略称で、日本語では「鉄筋コンクリート構造」や「RC構造」と呼ばれます。鉄筋は引張力に強く、コンクリートは圧縮力に優れるという特徴を持ちますが、それぞれ単独では弱点もあります。

そこで、鉄筋とコンクリートを組み合わせることで、引張と圧縮に対して高い強度を発揮し、耐震性・耐久性に優れた建物を実現できるのがRC造の大きな特徴です。コンクリートが鉄筋を覆うことで錆の進行を抑制することは、長寿命化にもつながります。実際に、マンションやビルなどの中高層建築に幅広く採用されているのは、性能面での信頼性が高いためです。

 

2. RC造のメリット

RC造は、頑丈な建築構造で地震や火災などの災害に強く、資産価値の維持にもつながります。主なメリットは下記の通りです。

  • 耐震性
    鉄筋とコンクリートが互いの弱点を補い合い、大地震にも耐えやすい構造となっていることから、地震の多い日本に適していると言われています。
  • 耐火性・防火性
    不燃材料であるコンクリートを主材としているため、火災時に燃えにくく有毒ガスも発生しにくいのがメリットです。建築基準法でも「耐火建築物」として扱われます。
  • 耐久性
    鉄筋をコンクリートで覆うことで酸化や熱から守るため、長期にわたって構造体として高い強度を維持できます。法定耐用年数も長く、資産価値を下支えします。
  • 資産価値の維持
    丈夫な構造により建物の寿命が長く、「長く住める」という信頼感が購入希望者に伝わりやすいため、売却時にも有利に働く傾向があります。

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3. RC造のデメリット

RC造は長寿命な住宅構造ですが、いくつかの注意すべき短所もあります。購入や売却の判断をする際は、下記のデメリットも理解しておきましょう。

  • 建築コスト
    鉄やコンクリートの価格高騰もあり、他の構造より建築費用が割高になる傾向にあります。賃貸物件では、建築コストの高さが家賃に反映される場合もあります。
  • 建築期間
    コンクリートを打設して固める工程が必要になるため、木造や鉄骨造に比べて工期が長くなる傾向があります。
  • 結露や湿気トラブル
    気密性が高いため湿気がこもりやすく、結露やカビの原因となる場合があります。換気システム設置が義務化されたことで改善傾向にありますが、築年数の古いアパートやマンションでは注意が必要です。
  • 暑さ・寒さの影響
    コンクリートは熱を通しにくい反面、一度熱を持つと蓄えやすい性質を持ちます。そのため、夏は室内が蒸し暑くなりやすく、冬は冷え込みやすい傾向にあります。断熱性の工夫が不十分だと、冷暖房費がかさむ可能性があります。
  • 重量による制約
    建物自体が非常に重いため、地盤が弱い土地では地盤改良工事が必要になる場合があります。

 

4. RC造は「うるさい」って本当?防音性の実態

RC造は、密度の高いコンクリートで造られているため隙間ができにくく、遮音性能に優れているのが特徴です。鉄骨造や木造に比べ、空気の振動で伝わる生活音を抑えやすく、防音性を重視する人には適した構造と言えます。しかし、すべてのRC造が必ずしも静かとは限りません。騒音が気になるかどうかは、内壁の材質や厚み、窓の性能、床の構造などに左右されます。

たとえば、柱と梁で支える「ラーメン構造」の場合、壁が薄くなることで防音性が低下するケースもあります。一方、「壁式構造」では壁自体に厚みがあるため、防音性能は比較的高くなります。

そのため、物件選びの際は戸境壁をたたいて響きを聞いたり、室内で手をたたいて反響具合を確認したりするなど、実際に遮音性を体感することが大切です。また、築年数や管理状態によっても性能に差が出るため、入居前には不動産会社に過去の騒音トラブルの有無を確認するとよいでしょう。

 

5. RC造と他の構造との違い

建物の構造は、主にRC造、SRC造、S造、W造の4種類に分けられます。それぞれ使用する素材や性能、コストに特徴があります。ここでは、RC造と他の構造の違いを比較します。

 

5-1. SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)との違い

SRC造(Steel Reinforced Concrete)は、鉄骨を柱や梁の芯材に用い、その周囲に鉄筋を組んでコンクリートを打ち込む構造です。RC造の耐久性や耐火性に加え、鉄骨の粘り強さを併せ持つことで、大地震時により高い耐震性を発揮するとされています。その強度から高層マンションや大規模ビルに多く採用されているのが特徴です。

ただし、建物全体が重くなる傾向があるため、上層階はコンクリートを省略することもあります。RC造と比べるとコストはさらに高額になりますが、長く住むことの安心感や資産価値の維持に優れた構造と言えるでしょう。

 

5-2. S造(鉄骨造)との違い

S造(Steel)は、建物の骨組みに鉄骨を用いた構造で、重量鉄骨と軽量鉄骨に区分されます。コンクリートを用いるRC造やSRC造に比べて建物全体が軽量で、体育館や超高層ビルなどの大空間を必要とする建物に適しています。鉄骨のしなやかさにより、地震時には揺れを吸収しやすい反面、変形が大きくなるため居住用途では注意が必要です。

また、防火性や耐久性の面ではRC造に劣る場合があり、定期的なメンテナンスも欠かせません。とはいえ、工期が短くコストも比較的抑えられるため、スピード感のある建築に向いています。

 

5-3. W造(木造)との違い

W造(Wood)は、木材を柱や梁に用いた構造で、日本の戸建住宅の主流です。軸組工法(在来工法)や2×4工法などがあり、軽量で加工しやすいため、狭小地や複雑な敷地にも対応しやすいのが特徴です。RC造と比べると建築コストが低く、リフォームの自由度も高いため、初期費用を抑えて戸建てを建てたい層に支持されています。

ただし、耐震性や耐火性ではRC造に劣り、木造住宅の法定耐用年数は短いため、長期的な資産価値は下がりやすい傾向にあります。一方で、木材特有の温かみや調湿性は居住性の面で魅力があり、RC造の堅牢さとは対照的に暮らしやすさを重視する構造と言えるでしょう。

 

6. RC造の法定耐用年数と実際の寿命

RC造の住宅は、税法上の法定耐用年数が47年と定められています。ただし、法定耐用年数はあくまで減価償却の計算基準であり、47年を過ぎると住めなくなるという意味ではありません。実際の寿命は、建設時の品質管理や立地環境、定期的な修繕の有無によって大きく変動します。

適切なメンテナンスや改修工事を行えば、60~70年以上利用できる可能性もあるとされています。また、木造の耐用年数である22年や軽量鉄骨造の27年に比べて、RC造は20年以上も長く、資産価値を維持しやすい点も特徴です。そのため、RC造は耐久性の高さから長期的に利用できる構造と言えるでしょう。

出典:東京都主税局「減価償却資産の耐用年数表」

 

まとめ

RC造(鉄筋コンクリート造)は、耐震性・耐火性・耐久性に優れ、長期にわたり資産価値を維持しやすい構造です。その一方で、建築コストが高く、結露や湿気トラブルが発生しやすいなどの注意点もあります。また、防音性についても「必ず静か」とは限らず、壁や窓の構造によって性能に差が出るため、実際に内見で確認することが重要です。

さらに、RC造は法定耐用年数が47年と長く、適切なメンテナンスを行えば、さらに寿命を延ばせる点も強みです。物件選びや売却を検討する際は、RC造の特性を理解した上で自分の暮らし方や将来の資産価値を見据えて判断することが、後悔のない選択につながるでしょう。